売上が増えたら、通帳も同じだけ増えるわけではない
ここからは、架空の一人サロンで見ます。開業3か月目、平均8,000円で40人に施術し、今月の売上は32万円だったとします。
ただし、40%の12万8,000円は現金などで今月中に入り、60%の19万2,000円はキャッシュレス決済で翌月10日に入る想定です。
今月32万円売れても、今月中に口座へ32万円全部が入るとは限りません。
売れたタイミングと、お金が入るタイミングが違う。これだけでも、売上と通帳の動きはズレます。
まず「売上・利益・実際のお金」を分ける
同じ「お金の話」に見えても、3つは別物
売上
商品やサービスを売った金額。まだ入金されていない分を含むこともある。
利益
売上から、その売上や事業のためにかかった費用を引いた残り。
実際のお金
今、銀行口座や手元にあるお金。実際の入金・支払いで増減する。
初心者のうちは、この3つを同じものとして見てしまっても不思議ではありません。
でも、ここを分けるだけで「売上はあるのにお金がない」の原因を探しやすくなります。
1|売上は「売れた金額」
売上は、商品やサービスを提供して「これだけ売れた」という金額です。
現金商売なら、売れた日とお金が入る日がほぼ同じこともあります。
一方、請求書を出して翌月に振り込んでもらう仕事では、売上が出た日と入金日がずれます。
このような「売ったけれど、まだ受け取っていないお金」は、会計では売掛金と呼びます。名前は覚えなくて大丈夫です。「売上にはなっているけど、まだ口座には入っていないお金がある」と分かれば十分です。
2|利益は「売上から費用を引いた残り」
同じ架空サロンでは、月40人なら、1人ごとに増える材料費・決済手数料等を1,000円、家賃など毎月かかる固定費を14万円として計算します。
売上 32万円
− 1人ごとに増える費用 4万円(1,000円×40人)
− 毎月の固定費 14万円
= 事業として残るお金 14万円
売上32万円から事業の費用や返済などが出ていくので、32万円がそのまま手元に残るわけではありません。
ただし、この14万円がそのまま通帳に14万円増えるとも限りません。そこで、実際にいつ入っていつ出たかを見ます。
3|実際のお金は「いつ入って、いつ出たか」で動く
架空サロンの開業3か月目を、実際の入出金に直して見てみます。
月初
事業用口座に30万円ある。
今月中
現金等の売上12万8,000円が入る。事業の支払い18万円と、融資返済の仮置き1万8,000円が出る。
翌月10日
今月のキャッシュレス売上19万2,000円が入る。
今月の売上は32万円、事業として残るお金は14万円でも、月末時点の口座は30万円+12.8万円−18万円−1.8万円=23万円です。
利益が出ていても、まだ入っていない売上や借入返済があると、通帳は先に減ることがあります。
利益が出ているのに、お金が減る例
同じ数字を「事業の計算」と「通帳の動き」に分けると、違いが見えます。
架空例|売上32万円でも、月末の口座は23万円になる
「事業としていくら残るか」と「今月、口座がどう動いたか」を分けて見ます。
今月の売上から、事業費用を引く
今月、実際に入った・出たお金を見る
事業として14万円残っているのに、口座は30万円から23万円へ減っています。
原因は、利益を見る時間と、実際のお金が動く時間がずれていることです。
自分の業種で読み替える
- サロン型:現金でその日に入る売上と、キャッシュレスで後日入る売上を分けます。家賃・材料費・返済などが先に出る日も確認します。
- 仕入れなしのサービス型:請求日と実際の入金日を見ます。入金より前にソフト代・外注費等を払う場合も確認します。
- 仕入れあり型:現金・カード・ネット販売等の入金日と、仕入代金・追加仕入れの支払日を分けて見ます。
ほかにも、利益と通帳がズレることはある
入金時期以外にも、利益と通帳残高がぴったり一致しない理由はあります。
生活費として引き出す
自分の生活のために事業口座からお金を出すと通帳は減りますが、その全額を事業の費用として扱うとは限りません。
事業用と生活用の口座をまだ分けていなくても大丈夫です。 口座が1つなら、生活で使った出金に印を付けて、事業の支払いと分けて見ます。
借りたお金を返す
返済すると通帳のお金は減ります。返済した金額と、利益の計算上の費用は扱いが違います。
設備などを買う
パソコンや機械など、大きな買い物では、払った金額とその時期の利益計算が同じ動きにならないことがあります。
ここを全部詳しく覚える必要はありません。
今は、「利益と通帳は別の理由で動くことがある」と分かれば十分です。
すると今度は「じゃあ、通帳にお金があれば商売は大丈夫なの?」という疑問が出てきます。これはSTEP02「通帳にお金があれば、商売は大丈夫?」で、これから払うお金まで含めて見ます。
私は利益だけで「大丈夫」とは見ない
私は公認会計士として監査の仕事をしていた時も、自分の事業の数字を見る時も、利益だけで「大丈夫」とは判断しません。
利益が出ていても、実際のお金が足りなくなれば支払いはできません。
だから、売上や利益を確認した上で、現金・預金に加えて、これから入るお金と出るお金も一緒に確認します。
ただ、初心者が最初から決算書を全部読める必要はありません。
まず「売上・利益・実際のお金は別」と分かる。そこから、自分の商売に必要な数字だけ順番に見れば十分です。
自分の数字を3行に分けてみる
まずは会計ソフトを完璧に見る必要はありません。
先月の数字を3行で書く
①先月、いくら売った?
②その売上や事業のために、だいたいいくら費用がかかった?
③先月、実際に通帳へいくら入り、いくら出た?
数字が一致しなくても大丈夫です。むしろ、そのズレが見つかったことが最初の成果です。
まとめ|売上・利益・実際のお金は、同じではない
売上はあるのにお金が残らない時は、この3つへ分けます。
売上
商品やサービスを売った金額。まだ入金されていない分が含まれることもある。
利益
売上から費用を引いた残り。売上の大きさだけでは分からない。
実際のお金
通帳や手元にあるお金。実際の入金日・支払日で動く。
ズレを見る
売れた日、入金された日、支払った日が違えば、利益と通帳も違う動きをする。
「売上が増えたのにお金がない」を、すぐ「もっと売らなきゃ」で片付けない。まず売上・利益・実際のお金を分けると、どこを確認すべきか見えてきます。
ここから先は、必要な方だけ
次の記事以外の選択肢
ここで自分のズレを確認できたなら、そのまま数字を見直して大丈夫です。