「自己資金はいくら必要?」に、全員共通の正解はない
まず、「自己資金」は自分で用意したお金のことです。
架空例|預貯金160万円と、事業資金150万円は別に分けて考える
退職前の準備を整理した記事「会社を辞める前に、何をしておく?」と同じ架空サロンです。
つまり「預貯金160万円=自己資金160万円」ではありません。生活に残す分と、事業へ入れる分を分けたうえで、事業に足りない100万円を借入候補として考えます。
①退職後・開業後の生活に残すお金を先に決める → ②今あるお金から生活側に残す分を引く → ③その残りのうち、事業へ入れても困らない金額を自己資金の候補にする → ④事業に必要な総額との差を借入候補として見る、の順です。
生活に残す金額がまだ決まらない場合は、「会社を辞める前に、何をしておく?」で、毎月の生活費と最初の入金までの期間から先に整理できます。この出し方は審査の合格ラインではなく、自分の生活を崩さずに事業へ入れられる金額を考えるための手順です。
自分の業種で読み替える
- サロン型:物件・内装・設備・材料・開業後の家賃等を、自分に必要な金額へ置き換えます。
- 仕入れなしのサービス型:設備が少ないなら、パソコン・ソフト・広告・外注・事業を続けるお金などへ置き換えます。
- 仕入れあり型:設備に加えて、最初の仕入れ・在庫と、売上が入るまでの追加仕入れを計算に入れます。
日本政策金融公庫(この記事では「公庫」と書きます)の創業期向け融資では、昔あった「創業資金の10分の1以上の自己資金が必要」という要件は、2024年の制度改正でなくなりました。
だからといって、自己資金が0円でも審査では何も気にされない、という意味ではありません。
最低○万円という入口条件がなくても、自己資金の額や貯め方は、創業準備や返済の余裕を見る材料になります。
自己資金を見る理由は、「やる気」だけではない
自己資金があることには、大きく3つの意味があります。
借りる金額を減らせる
必要なお金の一部を自分で出せれば、その分だけ借入が減ります。借入が減れば、毎月の返済も軽くなります。
創業後の予備のお金を残しやすい
売上が予定より遅れたり、思わぬ支出が出たりしても、手元のお金に余裕があれば立て直しやすくなります。
準備してきた過程が見える
創業に向けて少しずつ貯めてきた履歴は、「この人は前から準備してきた」という判断材料の一つになります。
公庫の2026年版「創業の手引」でも、自己資金は着実に蓄積することが重要で、割合が高いほど借入が減り、支払いに必要なお金を切らさず回すこと(資金繰り)に余裕を持ちやすいと説明されています。
「平均22.9%」は、合格ラインではない
公庫の2026年版「創業の手引」では、2025年度の新規開業実態調査として、創業時に集めたお金全体のうち、自分で用意したお金の割合は平均22.9%と紹介されています。
22.9%は「これだけあれば通る」という基準ではない
実際に創業した人たちの平均です。業種・必要な金額・本人の収入や借入状況によって、適切な自己資金の額は変わります。
「平均に合わせる」より、何にいくら必要で、そのうち自分でいくら出し、残りをいくら借りるのかを考える方が大事です。
通帳は、「今日いくらあるか」だけを見るものではない
初心者だと、「通帳を見られる=今の残高を確認される」と思いがちです。
私自身の公庫申請では、申込み前の時期に家族関係の急な出費などが重なり、預金が減っていた時期がありました。その状態で申し込んだため、現在の預金残高だけでなく、通帳上でお金がどう増減してきたかも実際に確認されました。
つまり、今の残高に加えて、「これまでお金をどう管理してきたか」という時間の流れも説明材料になります。
急な出費で一時的に預金が減ること自体はあります。大事なのは、直前に大きなお金が入った時だけでなく、大きく減った時も「なぜ増えたのか・なぜ減ったのか」を聞かれたら説明できる状態にしておくことです。ただし、理由を説明できれば必ず審査上問題ないという意味ではなく、残高や毎月の返済余力そのものも判断材料になります。
住宅ローンなど、他の借入があるだけで即NGではない
住宅ローン、自動車ローン、カードローンなどがあると、「借金が一つでもあれば新しく借りられないのでは」と不安になります。
ここで見るべきなのは、借入の有無だけでなく、毎月の返済額も見ます。
私の場合、公庫からは住宅ローンの支払いと生活費を含む負担が大きいことも、融資できない理由の一つとして実際に説明されました。
住宅ローンの残高だけで決めず、今すでに毎月いくら返していて、新しい返済を足しても無理がないかで考えます。
個人事業主は、事業のお金だけ見ても足りない
個人事業主の場合は、会社と生活が完全に別ではありません。
公庫の2026年版「創業の手引」でも、事業で残った利益から借入の返済をし、さらに家計の生活費を出す考え方が示されています。
だから、事業計画だけ黒字でも十分とは限りません。事業と生活を合わせた時に、返済を続けられるかまで見る必要があります。
私の場合、実際に見られたのはこの3つだった
ここは一般的な審査基準ではなく、私自身が2026年7月に公庫へ創業融資を申し込んだ時の実体験です。申込み前には、家族関係の急な出費などで預金が減っていた時期もありました。
預金残高
申込み時点の預金残高が少ないことを指摘されました。
預金の増減
通帳の流れも確認され、預金が減っていた時期や、その増減の背景が判断材料になりました。
住宅ローン・生活費
今ある毎月の負担が大きく、新しい融資の返済まで加えると重いと判断されました。
家族の出費、引っ越し、医療費、車の購入などで預金が一時的に減ることはあります。大きな入出金がある場合は、何のお金だったのかを自分で説明できるようにしておくと、金融機関から確認された時に話が通じやすくなります。ただし、説明できることと、審査上問題がないことは別です。
この経験からも、「自己資金100万円あるから大丈夫」「住宅ローンがあるから無理」のように、一つの数字だけで考えない方がいいと分かります。
私が実際に用意した「お金の状態が分かる資料」を見る
- 預金通帳・銀行の取引明細
- 証券口座の残高が分かる資料
- 住宅ローンなど、今ある借入の残高が分かる資料
- 給与明細・源泉徴収票など、他の収入が分かる資料
- 自宅の登記関係資料
これは私の案件で実際に提出・準備した資料です。全員が同じ資料を求められるという意味ではありません。
自分の場合は、4つに分けて見る
まず確認する4つ
- 自分で用意したお金はいくらあるか
- そのお金は、どう貯めたり用意したりしたものか
- 住宅ローンなど、今ある借入を毎月いくら返しているか
- 新しい融資の返済を足しても、生活と事業を続けられそうか
ここまで分けると、「自己資金が少ないから無理」と一括りにせず、どこが弱くて、何を説明・確認する必要があるのかが見えます。
まず5分だけやるなら
通帳を開いて、「今あるお金」と「毎月の返済」を見る
①今の預金残高、②毎月返しているローンの合計、③最近の大きな入出金を1つだけメモします。
分からない数字は「要確認」で大丈夫です。残高だけでなく、お金の流れを見るのがこの回の目的です。
まとめ|見るのは「貯金額」だけではない
自己資金は、全員共通の合格ラインで決まらない
必要額、借入額、これまでのお金の流れ、今ある返済、創業後の生活まで組み合わせて見ます。
自分で確認する時は、この4つに分けます。
今あるお金
自分で用意したお金がいくらあるか。
お金の流れ
どう貯め、どう増減してきたか。
今の返済
住宅ローンなどを毎月いくら返しているか。
借りた後
新しい返済を足しても、生活と事業を続けられるか。
「自己資金○万円」だけを見るより、預金、今ある返済、生活費、新しい返済をまとめて見ると、次に何を確認すべきかが分かります。
この記事で確認した公式情報
公式情報・制度の確認先を見る
制度や審査の運用は変わることがあります。この記事では2026年8月24日時点の公庫公式情報と、私自身の融資経験を分けて扱っています。
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