退職前に見るのは、「最後の出勤日」よりその後の空白
会社員の間は、毎月ほぼ決まった日に給与が入り、健康保険や厚生年金、税金の一部も給与を通して処理されています。
独立すると、この流れが変わります。
給与がなくなる一方で、生活費はそのまま続きます。事業側では、先に支払いが出て、売上や入金は後から来ることもあります。
退職から「事業のお金が安定する」までを一本で見る
毎月の給与がある状態
生活費はそのまま続く
自分で確認・手続きする
売上より先に出る場合もある
入金が十分になるまで時間差がある
私は6か月分を見ていました。それでも予定外は出ました
私自身は、独立後に事業を乗せる目標を3か月に置いていました。
ただ、3か月で必ずうまくいくとは限りません。何かあった時のために、生活側は6か月程度は持たせたいと考えていました。
住民税や健康保険、年金の負担が出ることは事前に分かっていたので、その分は見ていました。
ところが、退職後に一つ、かなり基本的なところで勘違いに気づきました。
最後の給与が入る時期を、ずっと勘違いしていたんです。
その給与を生活費に使うつもりだったので、予定していた入金がないと分かった時は、「じゃあ、どこから持ってこようか」と資金の組み替えを考えることになりました。
さらに、家族や猫に予定外の支出も出ました。6か月分を見ていたから何でも大丈夫、というわけではありませんでした。生活側で想定外が出れば、事業に回せるお金も変わります。このあたりは、後の融資で失敗した話にもつながっています。
今なら、退職前にここまで確認します
退職金と最後の給与が、いつ入るか
「もらえる金額」だけでなく、実際に口座へ入る日まで確認します。私が一番具体的に困ったのはここでした。
住民税・保険・年金を、ざっくり金額にする
前年の源泉徴収票や給与明細を見ながら、退職後に残る住民税、健康保険、年金の負担を予想しておきます。
健康保険は選択肢を比較する
任意継続が使える場合は、国民健康保険など他の選択肢と負担を比べます。申請期限は加入していた健康保険の案内を退職前に確認しておきます。
失業時の国民年金の免除・猶予も確認する
退職後に収入が減る場合、失業等を理由とした免除・納付猶予の対象になることがあります。必要書類を早めに確認し、会社から受け取る書類も放置しないようにします。
ここで言いたいのは、「6か月分あれば安全」ということではありません。私の場合は6か月を見ましたが、予定外の支出は普通に出ました。
1|毎月の生活費を、まず一度見える化する
私の場合は「事業は3か月で乗せる目標、生活側は6か月程度の余裕」と置きました。 これは全員の正解ではありません。自分の生活費と、最初の入金までの時間から決めます。
最初は生活側から見ます。
家賃や住宅ローン、食費、水道光熱費、通信費、保険料など、「仕事がまだ軌道に乗っていなくても出ていくお金」を一度並べます。
ここで「起業するなら生活費は○か月分必要」という一律の数字を探す必要はありません。
自分は月にいくら必要で、売上が安定するまで何か月くらい見ておきたいのか。この二つを掛ければ、少なくとも生活側の余裕が見えてきます。
STEP01「起業したいと思ったら、まず何をすればいい?」で3行を書いた紙があれば、その同じ紙に1行だけ足します。
① 生活費 × 仮月数を1行だけ書く
まず、今の毎月の生活費を1か月分だけ出します。
「売上が安定するまで○か月」という全員共通の正解はありません。まず最低限、最初の売上が入る時期が見えているなら、退職からその入金までを仮の期間にします。まだ何も決まっていないなら、ここはいったん「?」のままで進めてください。後の「売れた日と、お金が入る日は同じとは限らない」で入金時期を確認してから戻せます。
ここでは保険・年金・住民税や事業のお金まで書かなくて大丈夫です。まず生活側の1行だけ作ります。
2|健康保険と年金は、退職後の扱いを確認・手続きする
会社を辞めると、健康保険と年金の扱いも変わります。
健康保険には、退職前の健康保険を一定条件で続ける方法、国民健康保険へ入る方法、家族の健康保険の扶養に入る方法などがあります。どれを選べるか、いくらかかるかは本人の条件や加入していた健康保険によって変わります。
年金も、退職後すぐ別の会社の厚生年金に入らず、自営業者等になる場合は国民年金への切替手続きが必要になります。
退職後の健康保険・年金の正式な制度名と公式情報を見る
確認した公的情報
- 協会けんぽは、退職後の健康保険について「任意継続」「国民健康保険」「家族の健康保険の被扶養者」の選択肢を案内しています。協会けんぽ|退職後の健康保険
- 日本年金機構は、会社を退職してしばらく次の会社へ入らない場合や自営業者等になる場合、国民年金第1号被保険者の手続きが必要と案内しています。日本年金機構|会社を退職したときの国民年金の手続き
3|給与が止まっても、税金まで同時に止まるわけではない
退職後に意外と見落としやすいのが、会社員時代の収入に対して後から支払う税金です。
代表例が住民税です。住民税は前年の所得をもとに計算されるため、退職して給与がなくなった後でも、その年度の残りを自分で支払う場面があります。
つまり、「今後の収入が減るから、税金もすぐ同じだけ減る」とは限りません。
住民税の確認例
札幌市は、住民税は前年中の所得に対して課税され、退職後に給与から差し引けなくなった残額は本人が納めるケースがあると案内しています。札幌市|市税のQ&A
4|「売れた日」と「お金が入る日」は同じとは限らない
退職後のお金を考える時は、「いつ売れそうか」に加えて、実際にいつ口座へ入るかまで書きます。売上が出ても入金が後なら、その間の生活費や事業の支払いは今あるお金でまかなう必要があります。
売上と口座のお金がなぜズレるのかを詳しく知りたい場合は、「売上はあるのに、なんでお金が残らない?」で確認できます。ここでは、退職後の月数を考えるために「入金される時期」だけ押さえれば十分です。
5|生活側と事業側を、同じ時間軸に並べる
ここまでを別々に考えると、まだ「今辞めて大丈夫か」は分かりません。
最後に、生活側と事業側を一枚に並べます。
毎月いくら必要?
生活費、退職後の健康保険・年金、税金など、事業がまだ安定していなくても出ていくお金。
始める・続けるのにいくら必要?
設備、仕入れ、家賃、広告、外注など。さらに売上から実際の入金までの時間差も見る。
辞める前の仮計算|「必要なお金」と「用意できるお金」に分ける
生活・事業の支出と、今あるお金を同じ4行に混ぜず、左右に分けて差額だけ見ます。
退職後から事業が安定するまで
今ある・用意する予定のお金
分からない金額は「?」で大丈夫です。同じお金を生活側と事業側で二重に数えないようにしながら、「何が足りないか」を見つけるための表です。
架空例|必要282万円、用意できる260万円、差額22万円
これは架空の例です。サロン勤務を6年経験した人が一人で予約制サロンを始め、売上が安定するまで6か月と仮置きします。
生活側と事業側を足す
今あるお金と事業用の融資
この22万円をどうするか。退職を少し遅らせる、生活費を見直す、副収入を残すなど、条件を比べます。融資100万円は事業資金として計算しており、生活費を融資で埋める前提にはしていません。
生活費18万円、保険・年金・住民税等24万円、預貯金160万円は説明用の仮の数字です。事業資金150万円と「自己資金50万円+借入100万円」は、同じ架空サロンの融資設定です。
自分の業種で読み替える
サロンのように、1件ごとに少し材料を使う仕事
③には、物件・設備・最初の材料・開業後しばらくの家賃など、自分の事業で先に必要なお金を入れます。
講師・制作・相談など、仕入れがほとんどない仕事
③は、パソコンやソフト、広告、事務所など、本当に必要なものだけに置き換えます。すでに持っているものは無理に足しません。
物販・飲食など、仕入れがある仕事
③には、開業時の仕入れだけでなく、売上のお金が入る前に次の仕入れが必要なら、その分も入れます。
さっきの紙の続きに、残り3行を足します。
必要なお金と、用意できるお金を足して差額を見る
生活側・事業側で必要なお金を合計し、次に今ある預貯金や、決まっている資金調達を別に合計します。
分からない金額は「?」のままで大丈夫です。「必要なお金 − 用意できるお金」の差額か、次に調べる「?」が1つ見つかれば十分です。
そして、今あるお金と比べます。
足りない場合も、それだけで「起業できない」という意味ではありません。
開業規模を小さくする、退職時期を遅らせる、副収入を残す、必要資金を借りるなど、条件を変えるための材料になります。
生活と事業を合わせると資金が足りない場合は「融資って、何を見られる?」へ。そもそも売上が作れるか分からない場合は「集客って、結局何から始めればいい?」へ進むと、次に確認する場所が分かります。
今の自分は、どこまで確認できている?
退職前に一度見たい5つ
- 毎月の生活費はいくらか。
- 退職後の健康保険をどうするか、候補を確認したか。
- 退職後の年金手続きを確認したか。
- 住民税など、給与が止まった後も払うお金を確認したか。
- 事業のお金が実際に入るまで、どれくらい時間がかかりそうか。
全部決まっていなくても大丈夫です。「ここは会社へ確認」「ここは市役所へ確認」のように、確認先まで分かれば前進しています。
まとめ|退職前は「給与が止まった後」を先に見る
会社を辞める前は、退職手続きに加えて、生活費・保険・税金・事業のお金も見ます。
生活費
毎月いくら必要で、何か月分を見ておきたいか仮置きする。
保険・年金
退職後の選択肢・手続き先・負担を退職前に確認する。
税金
給与が止まっても、前年所得に対する住民税などが残ることを見込む。
事業の入金
売上額だけでなく、実際にお金が入るまでの時間を見る。
この4つを同じ時間軸に並べれば、「今辞める」「少し待つ」「規模を変える」「資金を借りる」などを、自分の条件で選びやすくなります。
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