制度の「融資限度額」と、自分が借りられる額は別

たとえば、日本政策金融公庫(この記事では「公庫」と書きます)の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、2026年8月24日時点で融資限度額7,200万円です。

ここを混同しない

7,200万円 = あなたが借りられる額、ではない

これは制度として扱える上限です。実際の融資額は、何に使うのか、事業計画、自分で用意したお金、今ある借入、返済できる見込みなどを見て審査されます。

公庫の公式ページにも、審査の結果、希望どおりにならないことがあると明記されています。

最初に確認したいのは、「自分はいくら必要なのか」です。

借入額は、「必要な額」と「返せる額」の2方向から考える

借りる金額を考える時は、2つの数字を別々に出します。

必要な額

何に、いくら使う?

設備、車、パソコン、広告、仕入れ、家賃など、事業を始めたり続けたりするために必要なお金を積み上げます。

×
返せる額

借りた後も返せる?

事業で残るお金、今あるローン、生活費、新しい融資の返済などを合わせて、無理なく続けられるかを見ます。

借入額の候補 「必要だから借りたい」と「返していける」が重なる範囲

必要な額が大きくても、返済すると生活や事業が回らないなら、そのまま借りる計画にはできません。

逆に、返せそうに見えても、使いみちを説明できる金額以上を借りる理由にはなりません。

ここで出るのは、「実際に借りられる金額」ではなく「申し込む金額の候補」です。

たとえば、必要150万円−自分で出す50万円=借入候補100万円、と出して、その100万円を毎月返しても続けられるかを確認します。ここまでできれば「100万円を希望する理由」は作れます。

ただし、100万円がそのまま融資されると確定するわけではありません。最終的にいくら融資するかは、金融機関が事業計画・自己資金・返済の見込みなどを合わせて審査して決めます。この記事で自分で出せるのは、希望額と、その根拠までです。

まず、必要なものを足して金額を出す

前の記事「自己資金はいくら必要? 通帳や他の借入はどう見られる?」で使った架空の一人サロンで考えます。

架空例|必要150万円から借入候補100万円を出す

物件の初期費用20万円
内装50万円
設備・備品25万円
開業時の材料10万円
開業後しばらくの家賃・広告・消耗品45万円
必要なお金150万円

必要なものを足した結果が150万円です。ここから、自分で事業へ入れる50万円を引きます。

事業に必要 150万円自己資金 50万円不足分=借入候補 100万円
自分の業種で読み替える
  • サロン型:物件・内装・設備・材料・開業後しばらくの家賃など、自分の開業に必要なものへ置き換えます。
  • 仕入れなしのサービス型:パソコン・ソフト・広告・外注・開業後の固定費など、サービスを始めて続けるためのお金へ置き換えます。
  • 仕入れあり型:設備に加えて、最初の仕入れ・在庫・追加仕入れ・店舗費などを足して考えます。
運転資金は、私の公庫相談では「3か月程度が基本」と説明されました

これは私自身が受けた説明で、全員共通の固定ルールではありません。架空サロンの45万円も、家賃・広告・消耗品をどこまで見込むかを確認するための例です。

ただし、100万円が必要でも、返せるかは別です。次に毎月の返済へ戻します。

次に、「毎月いくら返すことになるか」を見る

同じ100万円でも、返す期間によって毎月の負担は変わります。

利息をいったん無視して元のお金だけ単純に割ると、違いはこう見えます。

5年で返すなら月 約1.7万円100万円 ÷ 60か月
10年で返すなら月 約0.8万円100万円 ÷ 120か月

実際に選べる返済期間や返済額は制度・資金使途・金利・返済方法等で変わります。ここでは期間による違いを見るための単純計算です。以後の架空の資金繰りでは、返済予定を約1.8万円/月と仮置きします。

だから「100万円借りられるか?」だけでは足りません。借りた後、毎月の支払いを加えても生活と事業が続くかまで見ます。

個人事業主なら、「返済した後に生活できるか」まで見る

個人事業主の場合は、事業で利益が出れば、その全部を返済に使えるわけではありません。

事業で残るお金
生活費 住宅ローンなど今の返済 税金・社会保険 新しい融資の返済
それでも生活と事業を続けられる?

この「生活側の負担」そのものは第4回で詳しく見ています。ここでは、その条件を借入額の計算へ戻すことだけ押さえれば大丈夫です。

自己資金・通帳・既存借入は STEP 04自分のお金の状態を確認する →

大きく借りる必要も、小さく見せる必要もない

融資というと「ある程度まとまった金額じゃないと相手にされないのでは」と思う人もいます。

私が公庫担当者へ直接確認したところ、公庫の融資額には固定のロット(決まった金額単位)はなく、50万円程度でも申請可能との説明でした。

必要額が50万円なら、50万円から考えていい

必要以上に借入額を膨らませる必要はありません。反対に、必要な資金を少なく見せて、開業後すぐお金が足りなくなる計画も避けます。

なお、今回相談した信用金庫では融資額について「ロット」という表現がありました。金融機関によって実務上の扱いは違う可能性があるので、少額融資を考える場合は相談先へ確認します。

私の場合、最初は減額方向。その後は逆に増額を提案された

ここは一般論ではなく、私自身の創業融資の実体験です。

公庫へ最初に相談

当初より減額方向

面談では、運転資金としてどこまで認められるかなどを確認した結果、当初の申請額より少ない金額で考える方向になりました。

その後、信用金庫へ相談

今度は逆に、増額する計画を提案

その後に相談した信用金庫では、逆に当初の計画より借入額を増やし、その金額に合わせて資金の使いみちを組み直す提案を受けました。

同じ本人・同じ事業でも、金融機関が何を融資対象として見るか、どんな組み方をするかによって、適切と考える金額が変わることがあります。

だから「私の上限は何万円?」という一つの答えを先に探しても、実際の融資額とはずれることがあります。

必要な額より、返せる額が小さかったらどうする?

ここで「必要な額は出た。でも今の計画だと返済が重い」と分かることがあります。

その時は、無理に借入額を通すのではなく、計画を組み替えます。

  • 最初に買うものを減らす:今すぐ必要な設備と、売上が出てから買えるものを分ける。
  • 自分で用意するお金を増やす:借入額そのものを減らす。
  • 返済期間を相談する:毎月の返済負担を変えられるか確認する。
  • 事業の固定費を下げる:毎月必ず出ていくお金を減らして、返済余力を作る。
  • 開業規模を小さくする:一度に完成形を作らず、続けられる大きさから始める。

必要な額と返せる額が合わないと分かれば、開業前に計画を直せます。

自分の場合は、この4つを順番に出す

借入額を考える4ステップ

  • 何にいくら必要かを足す
  • そのうち、自分でいくら出すかを決める
  • 残りの借入候補を、何年で返すか考える
  • 毎月返しても生活と事業が続くか確認する

この4つが出ると、「最大いくら借りられる?」から、「自分はこの金額なら必要性も返済も説明できる」へ変わります。

まず5分だけやるなら

まず5分だけ

必要額・自己資金・月返済を、3行で書く

①何にいくら必要か、②自分で用意できるお金はいくらか、③借りた場合の毎月返済はいくらになりそうか、を3行に分けます。

まだ正確でなくて大丈夫です。「必要額と返せる額」を並べるのが最初の一歩です。

まとめ|借入額は「必要」と「返済」から作る

大前提

制度の上限額は、あなた個人の借入可能額ではない

自分の借入額は、何にいくら必要かと、その後も返していけるかの両方から考えます。

順番はこの4つです。

01

必要額

何にいくら使うかを足す。

02

自己資金

自分でいくら出すかを決める。

03

返済額

何年で返し、毎月いくら出るかを見る。

04

返済後

生活と事業が続けられるかを見る。

最大額を当てるより、「この金額が必要で、この返し方なら続けられる」と説明できる方が、融資の金額を考える出発点になります。

この記事で確認した公式情報

公式情報・確認先を見る

制度の限度額・返済期間・審査運用は変わることがあります。この記事では2026年8月24日時点の公庫公式情報と、私自身が金融機関から受けた説明・融資経験を分けて扱っています。

次の記事

売上予測って、どう作ればいい?

借りた後に返せるかを見るには、「これからどれくらい売上が出るのか」を数字にする必要があります。次は、その売上をどんな根拠から作るかです。

ここから先は、必要な方だけ

次に見る場所を、自分で選べます

ここで終わっても大丈夫です。必要な時だけ、ブログ一覧・お問い合わせ・サービスを使ってください。

自分で確認する融資・経営の記事を探す

自分の次の疑問に合う記事を、ブログ一覧から探したい方向けです。

ブログ一覧を見る →
個別条件を聞くお問い合わせ

自分の場合はどう考えるか、個別の条件について確認したい方向けです。

お問い合わせを見る →
支援内容を確認するサービス・料金

どんな支援があり、どこまで頼めるのかを先に確認したい方向けです。

サービス・料金を見る →