最初から完璧な事業計画書を作らなくていい

融資というと、「事業計画書を完成させて、必要書類を全部そろえてから金融機関へ行く」と考えがちです。でも、相談と申込みは分けて考えて大丈夫です。

日本政策金融公庫は、創業予定者向けに申込み前の相談を案内していて、創業計画の立て方や融資申込みの流れについて相談できるとしています。

1

相談する

まだ分からないことがあっても、まず次に何を確認すべきかを見る。

2

必要な数字を一度そろえる

必要額、売上、経費、今あるお金、毎月の返済を順番に確認する。

3

申込書類をそろえる

自分の状況に必要な書類を、公式案内で確認して準備する。

4

面談で説明する

作った書類を読むのではなく、自分の事業を自分の言葉で説明する。

何も準備せずにいきなり申込むと、金融機関から聞かれたことをその場で初めて考えることになります。まずは「相談できる材料」を作る、くらいで考えると進めやすくなります。

まず「何に、いくら必要か」を分ける

最初に「100万円借りたい」と金額だけ決めると、後から使いみちを当てはめる形になりやすいです。

先にやるのは、事業を始めるため・続けるために必要な支出を、一つずつ出すことです。

一度買うもの

パソコン、什器、機械、内装など。設備として必要なら、見積書を取ると金額の根拠になります。

売上が安定するまで事業を回すお金

家賃、通信費、広告費、外注費など。売上が立つまで何か月分必要なのかも一緒に考えます。

1行ずつ、これだけ書けば十分です

  • 何に使うのか
  • いくら必要なのか
  • いつ支払うのか
  • その金額の根拠は何か(見積・料金表・過去実績など)

金額がまだ決まっていないものは、無理に確定させなくて大丈夫です。「見積待ち」「予算」「まだ不明」と分ければ、次に確認する場所が見えます。

架空例|同じ一人サロン

150万円を「何に使うか」と「どう用意するか」に分ける

同じ150万円でも、購入・支出の予定と、お金の用意方法は別の話です。先に分けると、借入100万円がどこから出た数字か追いやすくなります。

01
150万円を何に使う?購入・支出の予定
物件の初期費用20万円
内装50万円
設備・備品25万円
開業時の材料10万円
開業後しばらくの家賃・広告・消耗品45万円
使う予定の合計150万円
この150万円を、どう用意する? ↓
02
150万円をどう用意する?自己資金と借入に分ける
自己資金50万円自分で事業へ入れる
借入候補100万円不足分を借りる
自己資金 50万円借入候補 100万円必要資金 150万円

先に「何にいくら使うか」を積み上げて150万円と出し、そのあと自分で出せる50万円を引いて、残り100万円を借入候補として考えています。

次に、売上と経費の根拠を作る

相談前は、売上と経費を完璧に作り込むより、「なぜその数字になると思うのか」を説明できるところまで分けるのが先です。

前の記事と同じ「売上の分解図」をその場で確認する

売上の作り方は、前の記事で使った図解と同じ考え方です。必要なら、ここで図だけ確認できます。別の記事へ移動する必要はありません。

図解|売上の根拠を分解する

売上の数字を、説明できる条件へほどいていく

1件いくら? 商品・サービスの単価
月に何件? 必要な販売件数・客数
その件数は現実的? お客さんの来方・営業日・対応できる仕事量
いくら費用がかかる? 仕入れ・外注・人件費・広告費など
ここまでつながると、「なぜその売上になるのか」を自分の言葉で説明しやすくなります。

※売上予測は未来を当てるものではなく、数字の根拠を整理するための分解例です。

売上

  • 単価はいくらか
  • 月に何件・何人を想定するか
  • その件数はどこから来るか

経費

  • 毎月ほぼ同じ支出
  • 売上が増えると増える支出
  • 大きな支出の金額根拠

個人事業主は、生活費や今ある借入も並べる

事業の数字だけでなく、預金、毎月の生活費、住宅ローンなど今ある返済も一度並べます。新しい返済を足した後も、事業と生活を続けられるかを見るためです。

書類は「数字の根拠」として集める

ここまで確認すると、必要書類の意味も変わって見えます。書類は、自分が話している数字や状況の根拠を示すために使います。

事業の計画を示す

創業計画書など。何をする事業で、どう売上を作り、いくら必要かをまとめる。

必要額を示す

設備を買うなら見積書など。『なぜこの金額が必要か』を裏付ける。

今のお金を示す

預金や今ある借入が分かる資料など。面談では資産・負債が分かる書類の準備が案内される。

事業の実在・条件を示す

法人なら登記、許認可が必要な業種なら許認可証など。状況によって必要書類は変わる。

公庫の申込時に案内されている書類例を見る

日本政策金融公庫の創業予定者向け案内では、申込時の代表例として次のような書類が案内されています。

  • 創業計画書
  • 設備資金を申し込む場合の見積書
  • 法人の情報が載った証明書(履歴事項全部証明書・登記簿謄本)
  • 返せなくなった時のために不動産を差し出す場合(担保を付ける場合)の登記関係書類
  • 営業に許可や届出が必要な事業の、その許可証・届出関係書類(許認可関係書類)

本人確認書類、送金先口座、確定申告書など、申込方法や事業の状況によって追加書類があります。実際に申し込む時は、その時点の公式案内で確認してください。

私の場合、実際に提出・準備した資料を見る

これは一般的な必須書類一覧ではなく、私自身の今回の融資で実際に提出・準備した資料です。制度や申込者によって必要なものは変わります。

公庫へ出した・準備したもの

  • 借入申込書、創業計画書、別紙の事業計画書
  • 設備資金の見積書、開業費の領収書・レシート
  • 預金通帳(全口座)、証券口座の残高資料、送金先口座
  • 源泉徴収票、住宅ローンなど今ある借入(既存借入)の資料、自宅関係の書類
  • 運転免許証、公認会計士・税理士の登録証
  • 顧問契約の確約書・覚書、外注先との業務委託契約書

信用金庫・信用保証協会(金融機関から借りやすくするため、返済を保証する公的な機関)ルートで追加したもの

  • 信用金庫提出用の事業計画書、見積書一式
  • HP・サービス料金ページの印刷資料、事務所写真
  • 旧計画と修正後計画の新旧対照表
  • 銀行口座・投資信託など資産状況が分かる資料
  • 給与明細、源泉徴収票、開業届の受信通知
  • 資格登録変更手続が進んでいることを示すメール・申請書
  • 借入残高証明書、不動産の全部事項証明書

特に信用金庫ルートでは、信用保証協会の確認が進む中で追加資料が増えました。「申込時に全部そろっていなければダメ」というより、審査の中で確認事項が具体化していくイメージに近かったです。

相談段階で全部そろっていなくても、分からない書類まで一人で推測する必要はありません。何が足りないかを確認すること自体が、相談の役割です。

面談は、答えを暗記する場ではない

準備段階では、模範回答を覚えるより、「何をする事業か」「なぜその売上になるか」「何にお金を使うか」を自分の言葉で話せるかだけ確認します。

途中で詰まった場所があれば、そこがまだ自分で説明できない場所です。面談そのものの流れや質問例は、STEP08「融資の面談では、実際に何を聞かれる?」でまとめています。

申請したら、すぐ結果が出るわけではない

申込後も、面談、追加確認、審査、契約などのやり取りが続きます。必要な資料が途中で増えることもあるので、「申請ボタンを押したら、あとは待つだけ」ではありません。

1

申込

申込書類・計画・見積などを提出。

2

面談・追加確認

事業や数字を説明し、必要なら追加資料を出す。

3

審査・契約・入金

結果後も契約手続を経て、融資金が入る。

実際の日数や順番は、金融機関・制度・案件によって変わります。

最初にどこへ相談する?

準備が途中でも、申込前に一度相談できます。公庫、信用金庫・地方銀行、商工会議所などの支援窓口など、入口はいくつかあります。

ここでは「相談先を1つ決める」ところまでで十分です。どこが自分に合うかは、STEP03「公庫・信用金庫・銀行。結局、どこから借りればいい?」で比較しています。

相談前に、自分で確認したいこと

ここまでを全部完璧にする必要はありません。むしろ、答えられない場所を持ったまま相談しても大丈夫です。その代わり、今どこまで分かっているかは見えるようにしておきます。

  • 何に、いくら、いつ使うのか
  • その金額の根拠は何か
  • 誰に、何を、いくらで売るのか
  • なぜ、その売上になると考えているのか
  • 大きな経費は何か
  • 自分で用意するお金はいくらか
  • 今ある借入や、個人事業主なら生活費を含めても返していけそうか
  • 今ある資料で説明できることと、まだ確認が必要なことを分けたか
まず5分だけ

STEP01「金融機関は、何を見て『貸す・貸さない』を決めるのか」で「説明しにくい場所」を書いた紙があれば、その同じ紙に○・△・×を足します。

準備できているものに、○・△・×を付ける

相談前チェックを見ながら、分かる=○、一部だけ分かる=△、まだ分からない=×を付けます。

×を全部埋める必要はありません。まず「相談の時に確認したい場所」が1つ見つかれば十分です。

まとめ|準備の目的は、書類をそろえることではない

融資相談の準備で一番大事なのは、金融機関と一緒に話せる材料を作り、自分でも計画の無理や抜けに気づけるようにしておくことです。

大前提

必要額・売上・今のお金を順番に確認し、返していける筋道を説明できるようにする

分からない場所は「次に確認する場所」として持って、相談へ行けば大丈夫です。

そのために、相談前から申請後まで、次の4つを押さえます。

01

何に、いくら必要か

支出ごとに、金額・支払時期・金額の根拠を書き出す。

02

どう売上を作るか

単価・件数・費用に分け、数字の理由を作る。

03

今のお金はどうなっているか

自己資金、今ある借入、生活費などを並べる。

04

申請後の確認に備える

面談や追加資料がある前提で、分からないことを確認しながら進める。

準備が途中でも相談できます。ただし、自分が分かっていること・分からないことを分けて持って行きます。このくらいの感覚が、初めての創業融資ではちょうどいいと思います。

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公庫・信用金庫・銀行。結局、どこから借りればいい?

次の記事は、最初の相談先の選び方です。公庫・信用金庫・地方銀行などの違いを、自分の状況に合わせて比べます。

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